ハロゲンランプやメタルハライドランプを支える沈黙の偉人モリブデン箔

みなさん、【モリブデン】という物質をご存じですか?

ウィキペディアで調べてみると、

銀白色の硬い金属(遷移金属)。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方構造 (BCC) で、比重は10.28、融点は2620 °C、沸点は4650 °C(融点、沸点とも異なる実験値あり)。空気中では酸化被膜を作り内部が保護される。高温で酸素やハロゲンと反応する。アンモニア水には可溶。熱濃硫酸、硝酸、王水にも溶ける。原子価は2価から6価をとる。輝水鉛鉱(MoS2 など)に含まれる。資源としては、アメリカで約30 %、チリで約30 %など、北南米で世界の過半数を産出している。
モリブデンは、人体(生体)にとって必須元素で、尿酸の生成、造血作用、体内の銅の排泄などに関わる。微生物の窒素固定に関しての酵素(ニトロゲナーゼ)にも深く関わっており、地球上の窒素固定量の70 %以上は、モリブデンが関与していることになる。
また、植物にとっても必須元素であるため、モリブデン酸のナトリウム塩やアンモニウム塩の形で、肥料として販売されている。

とのこと。人体にとっても必須要素だったり、肥料として販売されているということはこれを見て初めて知りました。

さて、今日はランプにとってのモリブデンの話です。

モリブデン箔は、ハロゲンランプであれば、
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放電灯であれば、
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こういったところに使われている薄い板状のものです。

役割

モリブデン箔の役割を簡単に言うと、異質のものの折り合いをつけることです。

ランプの命といわれる光を発する部分は【発光管】と呼ばれ、窒素やハロゲンガスなどが封入されており外気から遮断された状態になっております。また、この発光管は主にガラスやセラミックなどの材質でつくられています。そして、光を発する為には、発光管の外から中へ電気を流すための金属が必要になります。

しかし、ここで問題が起こります。ランプは点灯中に非常に高温になるので熱膨張というものがおこり、この時金属がガラスに含まれていると、材質ごとの膨張率の違いにより、その間にクラックが発生します。そして、そのクラックにより外気が発光管内部に侵入してしまうとランプが不点灯になるのです。

モリブデンはランプの封じ部と呼ばれるところで薄い箔状に組み込まれます。そして発光管内部と外部にそれぞれリード線が溶接され、外部から内部に電流を流す役目を負います。また、モリブデン箔の熱膨張率はガラスにとても近い為、点灯・消灯の繰り返しによる温度の変化でクラックが発生することがありません。

なので、ガラスと金属という異質の物質で常温・高温による変化が日々起こっても、ふたつの間にひび割れが発生しないよう、折り合いをつけているのがこのモリブデン箔なのです。

なんか、調整の為にがんばっているいい人!って感じがしませんか? 会社にもこういう人がいるといいですよね。

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脅威

そんな風に、日々異なるモノの折り合いをつけているモリブデン箔なのですが、脅威があります。それは、酸化と仕様以上の高温です。

ランプを点灯していると、どうしても外気に触れるところから酸素が侵入します。そして、モリブデン箔がその部分から少しづつ酸化して酸化モリブデンへと変身してしまいます。

酸化モリブデンになると、膨張率が変わってくる為ガラスとの間にクラックが発生してしまいます。

また、一般的にランプの封じ部の温度は350度以下になるようにランプメーカーから照明器具を製造するメーカーに仕様を求めているのですが、器具の設計がそうなっていなかったり、空冷ファンなど温度をコントロールする機能が故障などにより動作しなくなると、ランプの封じ部の温度が350度を超えてしまうことがあります。

すると、モリブデン箔の酸化が一気にすすみ、クラックが発生し、外気が侵入してランプ不点灯の原因となってしまうのです。

ちなみに、封じ部の温度を350度より高くする技術がいくつかあり、それを導入しているランプもあります。ただし、コストアップになってしまうので、なかなか悩ましいところです。

また、日々の酸化には封じ部を長くすることによりなかなか発光管へクラックが到達しないように対応しているランプがあります。発光管の大きさにくらべて、モリブデン箔の部分が長いランプを見たら寿命を長くするための対策で間違いないと思います。

まとめ

以上、ハロゲンランプやメタルハライドランプで必ず使われているモリブデン箔について説明をしました。

メタルハライドランプやハロゲンランプは、長い時間をかけて、いろんな問題を工場の技術や品質の方々が解決した歴史があり、モリブデン箔だけでなく、ランプ内部の封入ガスや、フィラメント、リフレクターのことなど、話題は盛りだくさんです。(まぁ、たいがい、不具合がらみの想い出なんですが..)

時代はますますLEDになってきていますが、メタルハライドランプもハロゲンランプも、まだまだいろんなところで使われているので、ぜひ、それらのランプを手にすることがあったら、ランプ封じ部にあるモリブデン箔をチェックしてみてください。